暴露 (秘密を知ってしまった・・・)

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 草野加世は、幸いにも本社に配属されることになった。
 総務部総務課、加世を入れて5人。寝癖がいつもついているあの田中課長が直属の上司である。
 総務課には先輩の女性社員一人に、男性社員がほかに2人いる。
 (上の人が私を評価しているんだわ)
 (きっと、研修で光ってたんだ)
 (瑠奈と私とでは、講師の見る目が違ってたしな~)
 根拠のない自分への会社評価を勝手に想像して、加世は一人悦にひたっていた。
 辞令を渡される式典では、山下瑠奈からの嫉妬の視線を痛いほど感じていた。彼女は千葉県にある営業所に配属されていたのだ。
 総務課の田中課長の横に座っている人が久保主任。少し太っていて、額にいつも汗が光っている。年齢は40歳くらいだと思う。田中課長とあまり変わらないのかもしれない。家には恐い奥さんがいて、きっと奥さんに内緒で何かいけないことをやってるはず!例えば、株とか・・・。株っていけなかったっけ??
 久保主任の隣が少し若い青木くん。私は青木さんって呼んでるけど、みんなから青木君って呼ばれてる。とてもまじめで、あまり人の目を見て話さない人だ。20代後半で結婚はしていないはずだ。ちょっとマニアックというか、オタクというか、微妙。
 私の隣にいるのが、もんだいの先輩だ!
 松村孝美という名前で、推定年齢28歳、未婚。私の教育係だ。とにかく、口うるさい。書類を乱雑にしているとすぐに駄目出ししてくる。机の上をいつも整理していないと、
「こんな状態では仕事ができないでしょう。書類を探すことに時間がかかって、効率が悪いじゃない」とチクチク。
 だから、私の仕事の大半は書類整理。
 この松村さんを私はひそかに「おつぼねさん」と呼んでいる。そう呼ぶには年齢が若いのだろうけど、私が持つイメージにぴったりだ。総務課ではみんなから一目置かれてるようだし、青木さんに至っては彼女に何も反論できないみたい。久保主任もときどき、やり込まれてしまって、だんまりするときがあるほどだ。
 彼女から同じことを注意されないように心がけようと、私もそれなりに工夫している。彼女から小言を言われるたびに、「おつぼねさん、わかりました」って心の中でとなえて、二度と注意されないようにって誓うことにしているのだ。小言への彼女の仕返しと自分への戒めを半分半分にして。
 だから仕事に没頭しているときに、「草野さん!!」って突然、声をかけられたときにはびっくりして、
「はい、おつぼねさん」って答えてしまった。
 周りからは失笑がいろんな口からもれてくる。
 私の顔が青ざめていたのはもちろんだが、彼女の顔も負けず劣らず青ざめていた。
 (あ~~~~あ、やってしまった~)
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