暴露 (秘密を知ってしまった・・・)

9

 新宿にきたときのことだった。
仕事も終わり次の日が休みという日に、加代は久しぶりに学生時代の友人と食事することになった。友人の職場の都合で新宿で待ち合わせ、そのまま有名な居酒屋に入った。早い時間にかかわらず店内は混んでいたが、幸いにも予約なしで座ることができた。
久しぶりに仕事を忘れて楽しい時間を過ごし、学生に戻ったように時間を忘れておしゃべりに興じた。
友人と分かれた後も、加代は上機嫌だった。次の日が休みということもあったが、あまり飲んでないながらもアルコールが加代の気を大きくしていた。
(あれ??)
加代は駅に向かいながら、反対の道を歩く男性に目がとまった。
(あれは、課長じゃない?)
反対方向に急ぎ足で向かっている男性は、確かに田中課長のようだ。仕事で来ていたスーツと同じだったので、仕事が終わってそのまま新宿に来たのだろう。
(あんなに急いで、どこに行くのだろう?)
課長の後をついて行こうと、とっさに思ったのは何もアルコールで気が大きくなったからだけではない。課長がどういう人物か、加代はまだよく分からなかった。その人となりを確かめることができるかもしれない。そんな予感がしたのだ。
(もし見つかったら、この前のミスのお礼を言いたかったと言えばいいし)
信号がすでに点滅している横断歩道を急いで渡り小走りになった。課長との距離はまだ二十メートルは離れているようだ。
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