【完】俺が消えてしまう前に


だから何なんだと言われると、非常に言いづらい。

・・・つまり。
俺らが幽霊なら死んだという事で、
事故にあってしまったのかもしれないということも否めないからだ。

愛希がどうして死んでしまったのか、
今さらあの家に戻って聞けるわけもない。
これ以上、愛希の両親を悲しませたくもないし。


そしてもちろん俺は新聞紙をめくれる手を持っていない。

七海の隣で記事の内容をじっくりと見る事が俺の仕事だ。



愛希は図書館の中を走り回っている。
人と当たる事もないし、見えてないから俺らは注意しない。
・・・本当は駄目なんだけど。


「愛希ちゃんも樹君も本名は分かってるんだから、どうにか分かると思うんだけどなぁ」


「でも事故じゃないかもしれないしな」


「そ、それは・・・うん」


「病死だったか、他の事で死んだのか。とりあえず俺は自分が死んだ事に実感が持てないよ」


「私の目の前にいるもんね・・・」


「触る事は出来ないけどな」



俺は七海の頭にふわっと手を置く。

が、そのまますり抜けてしまう。




「こんな事に付き合わせてごめん」


「謝らないでよ樹君。私が好きでやってる事なんだし!それに・・・このまま浮遊霊になんてなってほしくないもん」


「ありがとう」






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