狼系王子とナイショの社内恋愛
◇「泣いてもいいですよ」



結城さんに強制的に連れてこられたのは、ファミレスだった。

カップル限定なんて嘘じゃないですかっと帰ろうとしたけれど、結城さんはガッチリ掴んだ腕を離してくれず。
睨みつける私に、ここなら24時間営業だからと微笑んだ。

なんで営業時間を考慮してファミレスなのか、訳が分からないけれど。
結城さんの微笑みに切り札が頭をよぎって、大人しく従う事にした。

「そういえば今日、結城さんの噂聞きましたよ。
それも結構たくさん」

無理やり連れてこられたわけだし一番高いものでも頼んだらどうですか、という結城さんの言葉に甘えるわけでもなく頼んだのは、和定食。
あまり肉っぽいものは食べたくなかったから。

今脂っこいもの食べたりしたら精神的ダメージとのダブル攻撃で消化不良を起こしそうだし。

「ああ、悪い噂ですか」
「なんで分かるんですか?」
「俺の噂でいいものなんて聞いた事ないですし。
それ以前に、いい行いなんて社内でしていないので」

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