ドアを開け家に入ると、電気は点いているものの彼女の姿はどこにもなかった。


 ダイニングに着くと、テーブルの上にはサランラップが掛けられたごはん、味噌汁、肉じゃが、それから手書きのメモが置かれていた。


“落ち込んでいるので一緒にごはんが食べられません。申し訳ないけど、温めて食べて下さい。ごめんなさい”


 手に取り見ると、丸っこいけれど大きめではっきりとした彼女自筆の文字でそう書かれていた。


 僕はそのメモを読み終えるとテーブルの脇に遣った。そして寝室に行き仕事用鞄を置き、スーツを脱ぎ自分のクローゼットのハンガーに掛け、ネクタイを緩めた。


 ネクタイを取り、ワイシャツのボタンを二つほど外して着崩した後、僕は隣にある彼女のクローゼットの前へと足を進める。


「中、入ってますか?」


 クローゼットを僕は数度ノックした。


「……入ってます」


 少し間を空けて中から彼女の小さな声が聞こえてきた。

 普段はきはきと元気にしゃべるのに、今はぼそりと消え入りそうな声音で応答した。

 かなり傷つき、落ち込んでいるようだ。

 けれど返事をするということは、ある程度気持ちが落ち着いてきているということだ。