もっと傷つけばいい
ソウはあたしが作った料理を食べ、ワインを飲んだ。

その食べっぷりや飲みっぷりは見ていて気持ちがいい。

今日はもうこれくらいにしよう。

“夏子”はこの世からいなくなった。

あたしは“渚”だ。

堂々と、“渚”になればいい。

ソウが何者かどうかなんて、もう考えない。

例えソウが悪魔だったとしても、あたしは気にしない。

「――ナギ…」

酔いつぶれたソウが、テーブルに突っ伏していた。

ワインのボトルは、空っぽだった。
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