雨の日に、キミと一緒に創るエロ。
裏道イタリアン



  -------------時刻は17:00。

 30分後からのディナーの仕込みが終わり、店内で一息ついている時、店のドアが開いた。

 「申し訳ありません。 ディナーは30分後・・・あ。」

 「こんにちは。 ちゃんと洗って返しにきました。 どーも。 『ブス』です」

 ドアの方に目を向けると、そこには機嫌のよろしくない千秋が立っていた。

 「はいよ」
 
 千秋がオレに近付いてきて、洗った容器が入っていると思われる紙袋を乱暴にオレに押し付けた。

 『ブス』と言われた事を根に持っているらしい。

 てゆーか、先に悪態ついてきたの、そっちじゃねーか。

 「じゃあ、これで」

 ぷりぷりしっぱなしの千秋が早々に店を出て行こうとした。

 感想の一言くらいあっても良かろうに。

 「美味かったろ?? ティラミスもババロアも」

 帰ろうとする千秋を呼び止める様に話しかけると、

 「・・・足りなかった」

 千秋は立ち止まり、唇を尖らせながら振り向いた。

 「・・・あ??」

 イヤイヤイヤ、足りなくないだろ。 間違いなく2コずつ入れただろ。 

 「美味しかったさ。 とてつもなく美味しかったさ。 でも、両方ともあっという間に口の中で溶けてなくなっちゃうんだもん!!」

 へそを曲げ続けている千秋は、何故かドルチェにまで腹を立てた。

 でもそれは、文句の様な褒め言葉。

 千秋、もういい加減怒るの辞めればいいのに。

 あ、オレが『ブス』を撤回すればいいのか。
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