16の月-過去に戻れたら‥【完結】


「あー。まあまあ綺麗だったね」


実際・・
花火なんてまったく見てなくて‥
高宮さんばっかり見ていた‥。


「うん。よく見えたし綺麗だった!」


そう言って笑顔で答える高宮さんに
僕の心臓が激しく高鳴る。



「「‥あのっ‥」」

僕と高宮さんの声が被る。


先にどうぞと手を高宮さんの方へとやると

コクリと頷いた高宮さんは、少し間を開け‥



「私、水池君の事が前から好きでした。」




予測はなんとなく出来てはいたけれど、あまりにも
ストレートなので僕は、逆立ちでもしたかのように
血が逆流してきたみたいになって・・

耳にまで熱をもってしまったのが自分で解った‥。




いきなり「俺も好き」なんて言うのは変だし、
なんと言っていいか解らずに「ありがとう」と答える。


花火大会に誘われるまで、意識なんてしたことなかったけれど
誘われてから、僕の方が高宮さんに夢中になっていたのかもしれない。


「付き合って下さい。」
高宮さんが僕の目を見てハッキリと言った。


僕はコクコクと頷いた。


ホッとした高宮さんの顔を見て、僕もホッとした。


携帯のアドレスを交換しようと言ったけど、今時めずらしく
携帯は持っていないと言われた。


まあでも、前もって約束をすれば会うことだって出来るし、
問題ないか…


その日は花火が打ち上がり終わってからも、しばく2人で
月を眺めていた。


花火の煙で夜空は曇っていたけれど、そこからひょっこり顔を
出す月がとても綺麗だった。



花火大会の帰りは、僕の自転車の後ろに高宮さんを乗せて
帰った。


いきなり身体を密着させるのは、初めてだったので
僕の心音が聞こえないかハラハラした…。


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