淡い初恋

幸せな日々

お互いの想いが届いた私たちの初恋。早速私達は登下校を共にすることとなった。帰り道、「それにしてもいつから私のこと好きだったの?」と聞くと「気になるようになったのは最近だったかなぁ。とにかく他の男に奪われる前に先手を打たないとなとは思っていたけど。」と言われた。「先手って?」と聞くと「キス!」と言ってきたので私はすぐ顔が真っ赤になってしまった。「ん?なんだ~照れてるのか?図書室のキスを思い出したか?」とからかってくるので「う、うるさいよ。」と必死に誤魔化した。龍くんがケラケラ笑ってくるので「でも、あの時本当に急だったからびっくりしたんだから!」と訴えると「『先ず(まず)その言を行う、而して(しこうして)後(のち)これに従う。』だよ」と言ってきた。

いつぞやの論語の授業で習ったことを龍くんが言ってきた。確か、『まず言いたい事柄を実行した後で、自分の主張を述べる人こそ君子である』という意味だった。「まぁ、孔子が説いた本来の意味とは別物だけどな」と龍くんがニッと笑うと私は「今度からは言ってからにしてよ~」と切実に訴えた。

私の家の前まで着くと、急に龍くんが「あ!」と何かを思いついたように声を発した。

「ところでさ、今週の土曜日どうする?俺達の記念すべき初デートだろ?」と龍くんが言ってきたので「私、実は観たい映画があるの。」と遠慮がちに応えた。「え?何?」と聞いてきたので「純愛なんだけど・・・」携帯小説で話題となり、映画化されたあの女子高生達に人気の純愛映画のタイトルを言うと一瞬、龍くんがひきつったような顔になった気がした。「あ・・・そう。」と彼は応えると私はすぐさま「ダメかな?」と上目遣いで尋ねた。

「いや、別に・・・いいよ。」と言ってきたので私は「やった~!!」と言って飛び跳ねた。「凄く凄く好きな携帯小説なの!だからずっと観たくて!ありがとね!!」と喜ぶと龍くんがいきなり抱擁してきた。「うわ!!」彼の腕の中にすっぽりおさまり、彼のガッシリした胸板に押されて息が出来なくなった。「ぐ、ぐるじーよ、龍くん」と言うと「希、可愛すぎる!!」と言ってきた。「龍くん・・・」私も嬉しくて腕を彼の背中に巻きつけた。


誰も通らないし、今だけはこのままでも良いよね・・・。龍くんの温もりを感じて私はすごく幸せな気分になった。

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