淡い初恋

深まる溝

数日経ち、私たちの余所余所しい態度を不審に思い、不仲説が出回った。加奈子ちゃんも心配しながら「大丈夫?」と聞いてきてくれたけど、私は「うん。」とだけ応えた。「何があったの?」と聞かれ「別れたから。」とだけ応えると彼女は相当驚いていた。「なんで!?」と勿論聞かれたけど彼の不貞のことは、言えなかった。彼のような秀才が不貞だなんて先生に知られたら内申書に響くかもしれない。そんな彼の将来を潰すようなこと私には出来なかった。

そのやり取りを聞いていたのか、北沢くんも心配して「大丈夫か?」と聞いてきた。私は、力なくありがとうと言うと逃げるようにその場を後にした。

放課後、正門を出ようとした時、「希!」と龍くんに声をかけられた。立ち止まったけど振り返えれない。「希・・・。」彼が私に一歩近づいてきた。

来ないで・・・。龍くんにそんな甘く切ない声で呼ばれたら許してしまいそうで、泣きながら龍くんに抱きついてしまいそうで怖い。私の決心はもう揺るがない。龍くんが懺悔して後悔してくれるまで私は彼を避け続けると決めた。

すると北沢くんが私たちの間に入って制してきた。「なんだよ。」と龍くんの怪訝そうな声が聞こえたかと思ったら、北沢くんに小声でなんか言われたのかそれ以上は追いかけて来なかった。

北沢くんは私のところに駆け寄ると「行こう」と言って私達は一緒に歩き始めた。

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