腕時計
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    珠樹    俊弥










夏の日差しは、刻一刻とその姿を真上へと移動させる。
照り返しの強いアスファルトの上は、どっかの熱帯地方に負けないほどの灼熱地獄だ。
生卵が温泉卵に変わっても不思議じゃない。

「たまきー」

片手を上げ、額に薄っすらと汗をにじませた俊弥が私の方へ駆け寄ってくる。
その顔に心は弾んでも、この暑さに溶けてしまいそうな私ははしゃぐ元気もない。

とは言っても、元気がないのは暑さのせいだではないのだけれど……。

「待たせて悪いっ」

走り寄ってきた俊弥が暑さに顔を歪ませ、待たせた事をわびる。

本当だよ……。

ついた悪態は、口に出しもせず。
大丈夫。なんて、少しも思っていない言葉が笑顔つきで口からこぼれた。


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