毒舌に惑わされて
揺れ動く夜
再びやってきた週末。

今週は仕事が忙しかったから、『fantasy』に行って気持ちよく酔って癒されたい気分だ。

でも、聖也がいたらどうしよう。『fantasy』に向かって歩いていた足を止める。あと100mほどで着ける距離だ。

私は道の端によって、電話を掛けた。マスターがすぐに出たので、聖也が来ているか聞くが、来ていないと言われて安心する。

でも、今はいなくても、後から来る可能性もある。悩みに悩んで『fantasy』のドアを開けた。


「莉乃ちゃん、いらっしゃい。今日も待ち合わせ?」


「ううん。今日は1人だから、こっちに座るね」


いつも座るカウンター席に私が腰を下ろすと同時にマスターが温かいおしぼりを手渡す。


「せっかくの週末に彼氏と一緒じゃないの?」


「彼氏なんていないよ」


「あれ? 先週ラブラブだった人は彼氏じゃないの?」
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