恋愛ターミナル

この一生に一度の大事な一幕に、間抜けな声を上げた私。
左手の薬指にぴったりと収まるはずのリングは、第二関節で足止めを食らったまま。


「……あれ? サイズ……違ってた、か。凛々昔より痩せたっぽいしーとか思ったんだけど。あはは……」


頭をポリポリと掻いて言い訳を漏らす徹平に、怒りもわくことなく、私もつられて大笑いした。


「――もうっ。世界で一番かっこ悪いプロポーズねっ」
「……ちぇ。かっこよく最後までキメるはずだったのに……」
「ぷっ。無理無理! 今までそんなのしたことないじゃない」


お腹を抱え、涙まで出てきた笑いが止まらない私を、ふくれっ面で見ていた徹平は、急に両腕を掴んできた。
びっくりして笑いが止まった私と徹平の視線がぶつかった。


「凛々。おれと結婚してください」


こんなかっこ悪いプロポーズ。
けど、こんなプロポーズも悪くない。逆に一生忘れられないんだから。


「――――はい」


はにかみながら、夢にまで見たシチュエーションで「はい」と答える。
指輪も、場所も、プロポーズまでの流れも、どれも全然うっとりするような感じではなかったけど、でも、これが私たちのカタチ。


「でも、なんで今まで言ってくれなかったのよ」
「あー……もうちょっと安定した収入じゃないと、って。凛々が仕事辞めたとき、苦労させたくないし」
「は? 結婚したって、仕事辞めないよ?」
「……バーカッ。子供がもし出来たら、休まなきゃなんなくなるだろ。結婚しちゃったら、おれがセーブきかなくなりそうだったんだよ!」


せ、セーブって……!


私はちょっと頬を赤く染めて、ぶっきらぼうに言った徹平の言葉に顔を真っ赤にしてしまった。


――もし子供ができたらいつかバラしちゃおう。

『パパのプロポーズはひどかった』って。
『だけど、一生忘れない日にはなったけどね』って忘れずつけ足さなきゃね。





TERMINAL2 END



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