君しかいらない~クールな上司の独占欲(上)
scene.01 鬼


ヒールの音が、エントランスロビーに響く。

私は朝のこの音が好きで、聞くだけで今日も一日やってやるという気になる。


人を飲み込むゲート、ガラス張りのエレベーター、前線の匂い。

行きあう顔見知りと挨拶を交わすたび、全身が目覚めて、オフからオンに切り替わる。


ドアの横のリーダーにIDカードをかざす。

はめこまれたガラスで、さっと全身を確認する。

うん、悪くない。


解錠を告げる電子音は最後のスイッチ。

ドアの向こうは、活力と緊張感みなぎる世界。


さあ、今日も仕事だ。



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