カラフルデイズ―彼の指先に触れられて―

これを……このライトブルーを、どれだけ必要としているのか、知ってるつもり。
流れるように、思うがまま。落書きのように、でも、そこから生まれていくアイデアが、要も手もペンも紙も、心地いいんだと思う。

それはきっと、他のなににも変えられないはずで。

他人(ひと)のことだけど、まるで自分のことのように――。


「ペンなんて、数えきれないくらいあるのに……」


それでも、全く同じになる代わりなんて存在しなくて。
あの無邪気な笑顔が曇るのを、私は想像して何とも言えない想いに浸ってしまう。


「……阿部さん? どうかしましたか?」


気付けば横にいた神野さんに声を掛けられて見上げる。
彼女の手には、この箱の返品伝票。


「もう十年近く、同じことをしてるのに……急に切なくなったわ」
「……」
「何気ない一本が、誰かの一本なんだ……って、ガラにもないこと、思っちゃった」


笑いながら伝票を受けとって、箱の中に入れると蓋を閉じた。


そんなことを感じて思ったりすることに、意味なんてない。
大体私の仕事上、そこまで考える必要性なんてないし。

ただ、会社が作ったペンを売って、売れなくなったものを引き下げて。それの繰り返しをすればいいだけ。


そう何度も自分に言い聞かせながら会社に戻った。




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