カラフルデイズ―彼の指先に触れられて―
グレイ

 side 神宮司匠



――そろそろ時間だな。


腕時計を見て時間を確認すると、作業途中の画面を保存してパソコンを閉じた。

約束の時間は午後3時30分。
カジュアルな服装や話し方の、ビジネスほど堅苦しくない彼だけど、時間の管理はきちんとしてるようだった。

それを踏まえて、俺は15分程度早くにエントランスに向かうことにした。


企画ではまだまだ下っ端みたいなもんだから、せめてこういう接客染みたこととかで周りに貢献しなきゃな……。

周りにひとこと出迎えに行く旨を伝えると、そのままこっそりと喫煙ルームに寄り道をした。

タバコを咥えて火を点ける。
一口目は、大きくゆっくり吸い込むのが、俺のリラックス方法のひとつ。

細く長く、今度は吐き出すと、中央に設置されている換気装置が、その淀んだ白……グレーにも似た煙を飲みこんでいった。


タバコ。そろそろやめた方がいいんだよなぁ。
ぶっちゃけいいことなんかいっこもねぇしな……。金はなくなるし、こうして時間もなくなるし。体に悪いし、臭いはつくし、女には基本、嫌がられるし。


もう一口は短く吸い込んで、「ふっ」とすぐに吐く。


きっと、阿部はこういうのを『無駄なこと』とかって考えそうだな。


ゆらりと立ちのぼっては吸い込まれていく煙を見て、阿部を思い出しては笑った。


今まで付き合ってきた中には、喫煙を咎めるような相手もいたけどな。
でも、決まって聞き流しては、禁煙までには至らなかったけど。


「……あいつはそういうの、絶対許してくんなさそ」


ふ、と一人で笑いをこぼすと、まだ長いタバコを灰皿に押しつけて喫煙ルームを出た。



< 132 / 206 >

この作品をシェア

pagetop