カラフルデイズ―彼の指先に触れられて―
ホワイト


翌朝も、前日のお酒など全くものともせず、いつも通りに出社した。
“お酒に強い女”っていうのもマイナスポイントなのかもしれない。

正面玄関をくぐり抜け、社員証を首に掛けながらエレベーターホールへと向かう。
その途中で、周りがいつもよりもざわついていることに気がついた。

歩調を緩め、辺りの社員の様子を窺うと、ざわついているのは全員が女子社員。
みんなの視線を追ってみると、その先にいるのは男性二人だ。

よくよく見ると、スーツの人は神宮寺さん。
その隣にいる男性は、ワンウォッシュの細めジーンズに、ちょっと綺麗めな白いシャツ。

社内は、スーツ着用しなければならないという規則もないけど、それなりにビジネスで通用する服装が暗黙の了解。
だから、そのカジュアルな服装の彼が、このエントランスで一番目立ち、注目される理由はそれだと思った。

けど、私の予想に反して、周りの雰囲気から察すると、いい男に黄色い声を上げて盛り上がってるってところ。


まぁ、神宮寺さんはモテるし。
前まで本社(ここ)にいたけど、知らない人も結構いるのかもしれない。
だから、つい最近戻ってきた彼を見て騒ぎ立てて……。


「あの人でしょ? 今人気のデザイナー!」
「メチャクチャかっこいいんだけど!」


神宮司さんがいる方向から歩いてきた女性社員二人組が、興奮を抑えきれない様子で、きゃあきゃあと私を通り過ぎて行った。


『デザイナー』? それって、まさか……。


ふと、昨夜の神宮司さんの話を思い出す。
すると、話をしている二人がだんだんと私の方へ近づいてきた。

顔がはっきりと見える位置まで来たときに、神宮司さんが私に気付いてアイコンタクトをする。
それに軽く応えるように会釈をしようとしたときに、隣を歩く男性と、一瞬目が合った。

すぐに彼は神宮司さんに視線を戻し、エレベーターへと乗り込んで行ってしまった。




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