カラフルデイズ―彼の指先に触れられて―
良心がほんの少し、痛む。
本当はこんなふうに、相手にいやな思いをさせるような言い方をしたいわけじゃないのに。
だけど、実際には裏腹で。嫌味のように、勝手に口をついて出る言葉に、やっぱり自分が嫌になる。
けれど、きつく言い放った私を、要は解放しなかった。
細いと思っていた腕は、間近で見ると引き締まっていて、意外なほどの力強さに驚かされる。
気付けば、無言になってからこの状況に戸惑いを隠せない心臓が、ドクドクとうるさく聞こえる。
すると、頭にコツン、と要の顎が乗せられた感触と重みを感じた。
「オレ、あのペンは何にも変えられない、特別なペンなんだ」
――そんなの、改めて言われなくてもわかってるわ。
横目でデスクを見ると、転がっている一本のライトブルーのペン。
数本同じものがあったということだけじゃなく、あなたの目が、手が、あのペンを持ったときに喜んでいたもの。
不安定な心で立つ、自分の足を見つめて思った。
その『特別』がリアルに伝わってきたからこそ、こんなスランプを感じたのかもしれない。
まだ浮かない気分の私に、頭から要の声とその振動が足の先まで伝わって来る。
「それは、美雪だって同じ。美雪の代わりは誰もいないのと」
彼の声と、背中に感じる温もりと。そしてその言葉の内容に、凍りついていた心が解けるのなんて一瞬で――。
「な……ん、で……」
なんで……。どうして、たった数日前に出逢った男に見透かされるようなことを。
私が今、ウソでもいいから欲しかった言葉をくれるなんて。
ゆっくりと振り向き、見上げると、すぐ近くに均整のとれた綺麗な顔がある。
私をじっ、と見つめる濃褐色の目に自分が映る。