「美雪は、いつもまっすぐに向き合っていたから」
「……は……?」
「それなのに、さっきから一度もオレを見ようとしない」


関心なんて持たないような性格していて、その瞳はしっかりと他人(私)を見てるっていうの?


「……それは要のほうじゃない。今日わざわざ呼び出しておいて、私を見ることもしないで作業して。まったく、意味がわからないわ」
「ふ、ふふっ。ははは!」


またいつもの“私節”が戻ってきた途端、要は私の耳元に顔を埋めるようにして笑いだした。
目が点になっている私を見て、涙目になっている。


なにが一体そんなにおかしいっていうの……?
『構ってくれない』みたいな言い方になってしまったから、私らしくもないと思って?
それともいまさら、こんな高慢ちきな私のしおらしい姿で笑いが込み上げてきたってこと?!

自分の考えが当たりだとしたら――。


そうだとすれば、なんだか悔しいやら恥ずかしいやらで、さっきとは違う意味で顔が熱くなる。


「ああ、ごめん。美雪が勘違いしてるみたいだったから」


目尻の涙を逆手の親指で拭い、そしてこの上なくうれしそうな顔をして言った。


「美雪、オレのこと呼んでみて?」
「え?」


要のことを――――……? ああっ!

心の中では『要』と呼び捨てて、口では『本庄さん』って嫌味を含めて言ってたのに。
つい、余裕がなくなってからは心の呼び方がそのまま出て……!


「みーゆきっ」
「うっうるさい! 気安く呼ばないで!」


認めたくはないけど、でも、昨日からずっと落ちっぱなしだった心に、少しは歯止めがかかったみたい――。