「あ、これだわ」


ひとり資料室で漏らすと、棚の中から一冊のファイルに指を掛けた。
電子保存とかしてない頃の限定商品カタログなどが綴じられたそのファイルが目的だった私は、その場でファイルを開き、目を通す。


いろんなものが、進化してるわ……。

保存方法もそうだけど、やっぱり商品の機能とか材質とか。


選ばずに開いたそのページを眺めていると、左側のドアが音を上げた。


「あ」


そう一声、先に漏らしたのは森尾さん。

この前の件もあるし、ふたりきりになるのは私だって多少なりとも気まずいし、正直心境は穏やかでない。

森尾さんと目が合った私はそう思い、手元の資料をパタン、と閉じると何も言わずに彼女の立つ扉へと向かい、そのまま資料室を出ようとした。


「あの」


肩の下からぽつりと森尾さんの声がする。
掛けられた言葉に、ドアノブから手を離した私はチラリと彼女を見降ろした。


一体今度はなに?

昨日、“とりあえず”謝罪はされたけど、それって神宮寺さんの力でしょ?
自覚してることだけど、結構私って敬遠される人間なのに、この子はよく怖がらずに来るわよね。


「なに?」


私のその応えを聞いた直後、森尾さんがスッと顔を上げ、物怖じせずに向き合った。

そして、彼女の特徴でもあるピンクの唇が開いたと同時に度肝を抜かれた。


「昨日はうまくいきました?」