もう少しだけ、あなたのそばに

「少しは落ち着いた?」


「はい。すみませんでした。」


ただ隣にいてくれるだけなのに、一人でいるよりもホッとする。

迷惑をかけるだけなのに、自分が情けない。

いつも私の心は、秋でいっぱい。

秋のことで悩み、喜ぶ。

秋ばかりだ。



「月島さん。落ち着いたら、ご飯でも食べに行かない?」


何も聞かずに私に気を使ってくれている倉橋さん。


「・・・・はい。」


小さく私が返事をすると、頭の上に彼の手がポンポンとのった。


「よし、行くか。何が食べたい。月島さんは、何が好き?」


「私は、なんでも・・・・」


「う~ん、女の子は、イタリアンとか好きだよね。月島さんは、パスタとか好き?」


「はい。好きです。」


「そうか、じゃあ、お勧めのお店があるんだ。そこでいい?」


「はい。お任せします。」


優しい倉橋さん。

きっと、会社でも女の子にモテモテだろう。

こんな会ったばかりの私にも優しいのだから。

でも、今はこの優しさに甘えたい。

だって、辛すぎるから。
今は、秋のことを忘れたい。


私は、そっと、携帯の電源を落とした。



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