おかしな二人


あたしは、対角上のソファからL字の短い方へと場所を移動。
そして、凌と同じように表情を引き締めた。

すると、入口に目をやったままの凌が口を開く。

「あかり」
「ん?」

「そこじゃなくて、隣に座って」
「え?」

隣って、凌の隣?

隣といえば、そこしかないだろう、という当たり前の事を疑問に思ってしまうのは、できれば近づきたくなかったのに、という幼い頃の蟠りのせい。

「好きな者同士なんだ。隣に座っているほうが、自然だろ?」

確かにそうなんだけどね。

L字のソファだからといって、長い方に一人、短い方に一人と区切って座るのもおかしな話なのはわかっているが、つい条件反射というものか、距離をとってしまった。

あたしは納得をして、凌の隣に腰を下ろす。

すぐ隣に座ってみて初めて気がついたけれど、凌からはほんのりいい香りがした。

香水?
これが、大人のたしなみってやつ?

凌という人間が、今はあたしとは違う遠い世界にいるんだ、と改めて思った。


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