おかしな二人


「用事が済んだら、すぐに帰ってくるから」
「金……貰いに行くだけか?」

皺を寄せたまま訊ねてくる。

え?
どういう意味だろう?

よくわからないけれど、ちゃんと説明だけはしておこう。

「あのね。最初の打ち合わせの時に、あたし途中で帰っちゃったから。お金貰ったら、その埋め合わせで食事もしなくちゃいけないんだけど……」

そこまで説明して、ドタキャンしなくちゃいけなくなった原因が、目の前にいるこの人のせいだったことに気付く。

そうだよ。
あの時水上さんが、はよ帰って来い! なんて言い出さなきゃ、お金受け取るだけで済んだのに。
面倒臭くなった原因は、この雇い主のせいもあるんじゃん。

それ思い出したら、なんだかちょっとイラッと来たぞ。

したくもない相手と、食事しに行く身にもなってくれ。
いくら料理が美味くったって、ちっとも楽しいわけないんだから。

いつの間にやら怒りに顔を歪ませていたらしく、その顔を見ていた水上さんが面白がってあたしを真似て同じように顔を歪ませる。



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