おかしな二人


席に着いて、丁度目に付くテーブル席の男性客にふと視線を向けると、どこかで見たことがある感じがした。
けれど、思い出せずに首を捻る。

「随分、おしゃれというか、雰囲気が高貴というか……」

あたしが躊躇いがちに店の感想を口にすると、凌が眉を下げた。

「ちょっと、かしこまり過ぎたかな」

テーブルに置かれたメニューを開き、そう零す。

「ここは、名の知れた人がよく利用する場所なんだ。おかげで、気を遣わずに済む」

へぇ~、と零し、もう一度男性客に視線をやって思い出す。

ああ、いつだったかテレビで見た俳優さんだ。

水上さんのところで働くようになって、時々テレビを見る機会ができた。
おかげで、最近の情報にはそこそこ精通している。


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