おかしな二人


「兄貴、具合は?」

凌の事を訊かれ、ビクリと心臓も体も跳ねた。

考えないように、と一生懸命に閉じ込めていた感情がまた体中を支配していく。

抱きしめられ、近づいてきた唇を否応なく思い出し、体が震えた。
悲しげに叫んだ凌の言葉が、胸を苦しくさせていく。

「大……丈夫……」

応えた声が震えた。

「少しも大丈夫に見えへんけどな」

落としていた視線を徐に上げると、力強い瞳があたしを見据える。

「平気だよ。熱……下がったし……」
「ちゃう」

英嗣が、はっきりとした口調で否定する。

「大丈夫かって訊いとんのは、明のことや」

力強い眼差しを逸らすことなく、英嗣が半歩前に出る。
近づいた距離に、心が泣き出しそうになった。


< 509 / 546 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop