「好きなもん頼みぃ」

テーブルの上のメニューをあごで指し、水上さんは被っていた帽子を脱ぐ。
クシャクシャと髪の毛をかき混ぜると、ぎょろりとした目が現れた。

うん、いつ見ても、はっきりとした大きなお目目。

オブラートに包んだ表現で、恐怖を和らげてみる。
だって、恐いんだもーん、この二重のお目・目。

水上さんの表情にビビリつつ、メニューにも視線をやる。
そこへおじさんがやってきて、お茶とお絞りを置いた。

「英嗣は、いつものか?」
「うん」
「お嬢ちゃんは?」

そう訊かれても、はっきり言って迷う。

今まで『食べたい物』なんて贅沢を言ってられない生活だった。
だから、急に好きな物を頼め、って言われても端から端まで全部。って言いたくなるくらい目移りしてしまう。
かといって、そんなに全部食べられるわけもないから。