流れ星になったクドリャフカ〜宇宙で死んだ小犬の実話〜

「そういえば、トラスキンさんの言っていた青い目の犬はどうしてるんです?」


 大人しくエサを待っているマリューシュカにエサ箱を差し出しながら、トラスキンさんの方を見る。


「俺ん家にいるよ」

「連れてこないんですか?」

「オスだったんだよ」

「ああ…………」


 メスでなければ宇宙犬にはなれない。

 クドリャフカはメスだったけれど、トラスキンさんが目をつけた犬は懸念通りオスだったらしい。

 それでもまだ家に置いているということは、個人的に飼うつもりなのだろう。


「そういえば、R-1Vロケットが完成したらしいな」

「えっ」


 その言葉に、餌をやる手が止まった。


「あ、そうなんですか……おめでとうございます」


 R-1Vロケット。

 この間、ユリヤさんが言っていたロケットだ。

 あれが完成したということは、命がけの飛行実験が始まるということだった。

 僕は、きゅっと唇を噛んだ。


「俺におめでとう言っても仕方がないだろう。別に俺が開発したわけじゃないんだし。おまえの、愛しの君に言ってやれ」

「愛しの君って……」


 ただ、取り繕うような笑みを浮かべるしか出来なかった。
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