花と蜜蜂
花と蜜蜂

セミダブルのベッドで口を開けて眠る、彼の姿を見つめる。


最近エッチしたの、いつだっけ。
ふとそんな事を思った。

ハタチの時から付き合いだして、もうすぐ10年。
いろんな意味で、空気のような存在になった彼、横山サトシ。

仕事で疲れてるのか、夜もあたしより早く寝てしまう。


昔は、どんなに遅くなっても、一緒に布団に入って、おやすみのキスをして。
腕枕してくれてたっけ……。


『花は、かわいいな』


耳元で囁かれる愛の言葉。
あの時は、彼の心拍数を聞いて眠るのはすごく心地よかったな。


今じゃ、お互い背を向けて寝る始末。
キスなんて、彼の気が向いた時だけ。

エッチだって。それこそ義務的な感じだった。


あーあ……。
いつからあたし達、こんなに冷めた仲になっちゃったの?




深い寝息。

彼に負けないくらいのため息をついて、その寝顔から顔を背けた。

チラリと壁のカレンダーに目を配る。

彼がひとり暮らしのあたしの家で同棲するようになって、今週末に迫ったクリスマスで5年になろうとしていた。




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