岸栄高校演劇部〆発端



「ハル、ちょっといいか?」



隣のクラスにいる【霧白 遥乃】(きりしろ はるの)を訪ねにきた俺たち。


サラサラの綺麗な長い茶髪に、大きな黒目。色白で、すれちがった時にふわっと良い香りがする。そんな、女の子。


すっげ可愛くて、エイジの幼馴染みちゃんだと云う事をつい先程知った俺は、口をパッカーンと開けて間抜け面を晒していた。


ら、その隙を突かれてエイジにここまで連れてこられたというわけだ。


霧白さんを気安く【ハル】と呼ぶエイジに、ちょっとだけ嫉妬しちゃった俺がいたりいなかったり。


教室で女子と喋っていた霧白さんは、その子たちに「ちょっと待ってて」と言うとこっちに来た。


途端にキンチョーする俺。それをエイジが「わっかりやす!」と言って笑いそうになるから肘で思いっきり突いてやった。


地味に身悶えするエイジに素知らぬ顔をしていると、「なあに?」と言って霧白さんが廊下に出てきた。



「どうしたの、エイジ。珍しいね。高校に入ってから一度も話しかけてくれなかったくせに」


「わりぃ、わりぃ。俺もダチ探しで忙しかったんだよ。ハルだって俺んとこに来なかったろ?」



ぷう、と可愛らしく頬を膨らませる霧白さんに、後頭部を掻いて言い訳するエイジ。


うぐっ……なんかお前らカップルみたいじゃんか。エイジ、お前はデートに遅れてきた彼氏かよ。


なんて内心面白くない状態で二人を見つめていると、ふいに霧白さんがこっちを向いた。



「あら、エイジ、この人は?」


「ああ、そいつが俺のダチ。な、ギン?ちなみにこいつ、ちょー面白れえの。入学式の日に……」


「わーわーっ!エイジ、しーっ!」



それは俺の黒歴史だ!絶対話すんじゃねえぞボケェ!


的な視線を送って口を塞げば、その様子を見ていた霧白さんがクスクス笑っていた。

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