恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~
恵美に嫌われたって、私は彼女の友達でいたい。


その気持ちは変わらない。
甘えさせてもらったぶん、私は返さなくては。


瞼は重いが、心は少し軽い。
もう少しで、私のアパートだ。


道案内しなくても、覚えてくれているようで。
以前と同じように、アパートの入口の少し前に停車して、シートベルトを外した。



「少し待ってろ」



後部座席から傘を引っ張り出して外に出ると、助手席側まで回り込んで来てくれた。


ドアを開くと、バチバチバチ、と傘を叩く激しい音がする。
慌てて差しかけてくれている傘の中へ滑り込むと、二人でアパートのエントランス内まで急いだ。


この一瞬で、足元がぐじゅぐじゅに濡れて気持ち悪い。


藤井さんは、一度傘を閉じた。私に斜めに傾けてくれていた分、肩や背中が濡れてしまっている。

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