恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~
「聞いてくれよ狭山。あ、俺もコーヒー頂戴」


休日、早朝、アポなし。


図々しい事この上ないこの男、笹倉瑛人は引っかき傷の原因となった昨夜の経緯をわざわざ報告してくれる。


さほど興味のない話を聞きながら、笹倉の分のコーヒーを入れセンターテーブルに置き、ソファを占領された私は仕方なくラグの上。


聞いてれば、よくある話で。
合コンで好みの巨乳ちゃんと意気投合してラブホへGO。


一夜を共にしたものの、問題は朝起きてから発覚した認識の違いだった。
連絡先を教えて、と言われた笹倉の最低ぶりは想像に難くない。



「なんで?必要なくない?もう会うこともないし」



言い終わるかどうかのうちに平手打ちくらったそうな。
すっかり冷めたコーヒーを飲みながら聞いていた私は



「自業自得だよね」

「なんでだよ。会ったその日にラブホの流れで、恋人って気になるほうがおかしくね?」



彼のコーヒーはまだ熱そうだ。
さらっとカップを交換した。


うん、飲み頃。



「だから、その子にも非があるってことでお互い自業自得。ってか入る前に確認したの?俺は特定の相手は作りませんって」

「………。」

「……さいてー。」



私の視線が冷ややかでも、しょうがないと思う。
彼はそっぽを向いて誤魔化すようにカップに口をつけると。



「あれ、ぬる」



と、不思議そうに首を傾げた。
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