恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~
中身は最低だが、笹倉はいわゆるイケメンだ。


百貨店のデパ地下勤務の私達は、髪の色や髪型などナチュラルさや清潔感を要求される。


そのことが整った顔立ちに誠実さを漂わせるから、女を勘違いさせてしまうのかもしれない。


誠実の二文字からこんなに遠い男はいないっていうのに。
そんな整った顔の向かって左、右頬を指差して笑った。



「平手にしては、見事なひっかき傷よね」

「平手なら甘んじて受けようと思って避けずにいたら、直前で爪立てられた」

「その子、左利きだったんだ」

「……気になるとこ、そこ?」



別に続きの気になる話でもないので逸らしただけで。


そんなことより、今日は同僚で親友の恵美とランチの予定がある。
携帯で時間を確認しながら、笹倉に帰れとばかりに手のひらを振った。



「ねえ、こんな朝っぱらから来たのってまさかそんな話する為だったわけ?なら、さっさと帰ってね」

「狭山、今日休みだろ?」



ソファから腰を落として這い寄ってくる。
その行動に先を予感して、私は片眉をあげた。



「恵美と待ち合わせがあるの!そんな時間ないし」

「いやさ、朝からまず一発、と思ってたとこにあの展開でさ。不完全燃焼っていうか。ムラムラしたまんまでさ。発散させて?」



つまり、朝っぱらからヤリに来たってことですか。
欲の色を含んだ斜めがちの視線に、溜め息が落ちた。


お尻で後ずさると、追いかけてきた大きな手がするりと太腿を撫でて、指先がわずかにショートパンツの裾を潜る。


その感触に気を取られていたら、彼の顔がすぐそこだった。

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