恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~
窓を開け放つと、部屋に充満する生ゴミのような匂いが少しやわらいだ。
持ってきた大きめのゴミ袋を広げて部屋に散らばるゴミを集める。
殆どがコンビニの弁当やおつまみの袋だった。


母はまだ、少しぼんやりとしている。
昨夜のアルコールが抜けきらないのだろう。


それでも、私の顔を見て漸く笑ってくれた。



「みぃちゃん。やっと会いにきてくれたのね」

「仕事が忙しくて中々これなくて。お母さん、コンビニ弁当ばっかり食べてちゃだめだよ。お酒もちょっと多いんじゃない?」


努めて明るく、優しく、ゆっくりと話しかける。


「だってお母さんひとりで寂しいのよ」



ソファにもたれ掛かりながら、ふわりふわりと、夢の中のような話し方。
これでも昔は、とても溌剌とした太陽を思わせる人だった。


対面キッチンで、リビングに見える母の様子を眺めながら溜まった洗い物を片付ける。
殆どが、グラスだった。


私が家事をしている間、母はアルバムを出してきて捲りながら、片付け終えた私が隣に座るのを待つ。


アルバムは私が高校2年の年で止まっている。
高校3年の頃から両親の仲が悪くなって、私の短大入学が決ると同時に離婚した。


母は今日もくすんくすんと鼻を鳴らす。
小さな子供みたいだ、と思う。


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