君が好き。~完璧で女嫌いなカレとの恋~
過去の傷と、その存在と...
「桜子ー!ちょっと起きてってば!」


「んー...、なんだよ菜々子。日曜日くらいゆっくり寝かせろよな」


なかなか起きない桜子の布団を、無理矢理奪い取る。


「っもう!なに中年おやじみたいなセリフ言ってるのよ!」


「バカ菜々子!もう秋なんだぜ!寒いだろうがっ」


そう言って私が奪った布団をまた奪い返し、すっぽりと被る桜子。


「もう!昨日約束したじゃない!お弁当作るから味見してくれるって」


「...あー...。そんな約束したっけか?」


「しました!!」


秋が深まるこの時期。
紅葉も始まり、肌寒さも増してきた。


「ちぇー...面倒だな。なんで今日に限って翔太の野郎、休日出勤なんだよ」


ぶつぶつと文句を言いながらも、ベッドから起き上がる桜子。


桜子の後に続いて、キッチンへと向かう。


「これ食えばいいの?」


「うん!」


桜子用に用意したお弁当のおかずを、桜子は手掴みで口へと運んだ。

その様子を私はただじっと見つめる。


「うん...。普通に旨いんじゃね?これなら東野さんに食わせられると思う」


「本当!?よかった~」


そう。今日は東野さんとデート。
実は付き合い始めて、休日に会うのは今日が初めてだったりする。


冷ましておいたお弁当を包んでいると、桜子が味見用のおかずを食べながら、話しかけてきた。


「しかしまぁ、菜々子も頑張るねぇ



「えっ?」


「だってよ、あれだけ家事なんて絶対無理!出来ない!って言って私と二人、翔太に任せっぱなしだったのによ。急に頑張る!って言い出したかと思えば、毎日のように翔太の指導仰ぎやがって。おかげで翔太の野郎、私にまで家事覚えろっていう始末。えらいとばっちりだぜ」


そう話す桜子に思わず笑ってしまった。


「おい、なんで笑ってんだよ」


「ごめんごめん!だって自立のためだもん。人間努力すれば、なんだって出来るものなのよ」


「言いますねぇ、菜々子様は。今日だっていそいそと愛妻弁当なんて作りやがって。裏切り者め」


「なによ~。自立しようみたいに言い出したのは、桜子でしょ?」



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