2LDKの元!?カレ
再会の日まで



「そうか。志保子がフラれたのか。よしよし」

聡はそういうと、まるで子供をなだめるように私の頭をなでた。

「なあ、志保子。やっぱり一緒にこないか?」

聡の言葉に心が揺らがないはずはない。

けれど、今自分のままで、目標も夢も投げ捨ててついていくようなことは出来ない。

「……ううん、いかない」
「そうか。だろうとおもった」
「もう。分かってるなら、そんなこといわないでよ。はい、カギ」

差し出した聡の手の平にマスターキーをのせる。

家具のなくなったリビングはとても広くて、初めてこの部屋を見た時、ずっと欲しかったソファーが置けるとはしゃいだのを思い出した。

そのソファーは今、私が借りたワンルームマンションの大半を占めてしまっている。

不釣り合いな家具。

でも、処分することができなかった。

「そろそろ行かなきゃ」

私は床に置いたカバンを拾い上げる。

「志保子」

聡は私の腕を掴んだ。そしてまっすぐに私をみつめた。

「元気でな、志保子。またいつか、会おう」
「うん。聡も元気でね……じゃあ」

するりとほどけた聡の手。

私はさよならをいわずに、マンションを後にした。

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