その一枚がくれたのは、勇気と恋でした
始まりの一枚の写真から
「この写真、綺麗だね」


思わず、口に出してしまった。



放課後の教室に戻ると、誰もいないはずの教室に男子生徒が一人、引き伸ばした写真を黒板に貼り付けて眺めていた。


「あっ、木ノ内さん。

あの・・・」


その男子生徒は私の名前を言ったところで、言葉に詰まってしまった。



クラスでの私はクラスメイトと話すことは滅多になく、いつも教室の隅の方で過ごし、全くと言っていいほど目立たない存在に徹している。

それだけに彼が私の名前を知っていることが、少しだけ驚きだった。


「私の名前知っていたんだね。

クラスで目立たないから、知られていないかと思った」


「そんなこと・・・」


そう言うと、彼は下を向いてしまった。
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