契約妻ですが、とろとろに愛されてます

入院

「柚葉」


私は琉聖さんの声を聞いて、さっきよりも意識がはっきりしてきた。


「琉聖……さん……?」


あんなことがあった後だから、まさか病室にいるとは思わなかった。


「どうして……」


「柚葉」


私を呼ぶ琉聖さんの優しい声……幻かと思った。瞬きを繰り返し、ベッドの横に立つ琉聖さんが本物だとわかると、涙が溢れだすのを止められない。


「まあ ゆず……どうしたの?どこか痛いの?」


反対側に立っているお姉ちゃんは、私の涙をハンカチで拭う。痛いんじゃない。琉聖さんにもう会えないと思っていたから嬉しくて涙が出て来た。


「美紀さん、あとは俺に任せて下さい 家に帰って休まれた方が良い 貴方まで倒れてしまったら大変だ」


「すみません そうさせてもらいます ゆずも琉聖さんの方が良いみたい ゆず、明日の朝来るからね 何か欲しいものはある?」


琉聖さんの美紀さんまで倒れてしまったら大変だと言う声にお姉ちゃんを見る。疲れ切った顔をしていた。心配をかけてしまい申し訳ない気持ちでいっぱいになる。


首を横に振ると、お姉ちゃんが病室から出て行きふたりだけになった。


「気分は?」


「私……」


話づらくて酸素吸入器を外そうとすると、琉聖さんが驚いて手を止める。


「柚葉!取ってはいけない」


「……話がしたいの」


琉聖さんの手を無視して酸素吸入器を外す。


「柚葉の話の前に俺から話すよ 昨日は心にもないことを言って君を傷つけてしまった。すまない それがなければこんなことになっていなかった」


琉聖さんに点滴をしていない方の手を両手で包み込まれる。


「誤解を……っ……解きたくて……」


呼吸が苦しくなり、うまく話せない。


「あとで話そう 今はゆっくり休むんだ」


琉聖さんはそう言ってすぐに酸素吸入器をつけてくれた。


「まだ……話したい……」


「側にいるよ ゆっくり眠るんだ」


側に居てくれる……。


安心すると、急激に眠くなって私は目を閉じた。

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