君のところへあと少し。

2

カランコロン♪


入り口のカウベルが鳴ったので、条件反射で“いらっしゃいませー”と言いながら立ち上がる。


「なんだ、ナリか。なに?今日は暇なの?」



店に入ってきた大柄な男を見て、はぁ、とまたまたため息。


「なに、とは何だよ。仮にも客だろ。」


仮にも…確かに。


「今日は?」

お冷とおしぼりをカウンターに置くと、男はスーツの上着を脱ぎ、ネクタイを緩めながらイスに腰掛けた。


「アイスコーヒー。ケーキは?」

(あんたの飲むのはアイスコーヒーじゃなくて、コーヒー牛乳だっつーの。)


心のなかでぶつくさ呟き、手早く準備をしているハルに男は聞き返す。


「イチオシはマスカットのタルト。
あと、スイートポテトかな。」


額の汗をおしぼりで拭いながら男は思案する。

「んー、マスカットかぁ。桃なら迷わないんだがなー。」


どうやら本気で悩んでいるらしい。



「どうせ暇だから、ナリ、食べてよ。」


可愛い柄のお皿に準備すると、アイスコーヒー(という名のコーヒー牛乳)と一緒にカウンターへ置く。


「え?マジ⁈」


嬉しそうな顔をしたこの男。

三浦 和也。
みうら かずなり、と読む。
普通、かずや、だろうがと突っ込むのもいい加減飽きた23歳。

ガタイがかなりいい。

身長が高く、胸筋とか上腕二頭筋とかムキムキだ。



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