君のところへあと少し。

6

「ねー、ハル。お祭り行かないのー?」


声をかけられてふいに顔をあげたら、ナリの端正な…イケメンフェイスが目の前にあった。


「え?」

「オレじゃねーよ。奏が誘ってんの。」
視線を逸らされた。

「あー、行かない。人混み苦手だから。それに酔っちゃうの。」

「あ、そうだね。何年か前に迷子になったしねぇ。」



ほじくり返さなくたっていいじゃん、ヒトの恥かしい過去を。
ブチブチ。


奏に、むにーっとほっぺたを引っ張られた。

「オレはレッスンがあるし、彼女といく予定だからハルとは行けないけどさー、ハルはナリと行けばいいのになーって思ったんだよ。」


よ…余計なお世話よー。


「ハルは人混みに入ると具合悪くなるんだよ。2年前、偉い目にあったから。」


ナリがボソッと突っ込む。

すみません、確かに迷惑かけました…。
人混みに酔って顔面蒼白な私を、ナリは右腕だけで抱え上げスタスタ歩いて送ってくれたんでしたっけ…。

「せっかくの祭りなんだからさ〜、利用しない手はないんだけどさ〜、ハル。」


したり顔の奏。

こんちくしょいっ。
人の弱み握ったからって…。







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