東京ロマネスク~冷酷な将校の殉愛~《完》
麗らかな午後の昼下がり。


全面硝子の向うに見えるのは春の息吹を待つ庭園。


花の美しい季節に思いを馳せながら、使用人の秋が銀座に出て買って来たロシアケーキを口にする。



「椿様!!大変です!!!」


使用人の秋が扉を乱暴に開けて広間に入って来た。


冷静沈着の秋の粗相な行動に首を傾げる。



「どうしたの?そんなに慌てて…秋らしくないわ」


「…椿様に見合い話が…」


「私に見合い?」


私も19歳。
華族の令嬢として見合い話が舞い込むコトに驚きは感じなかった。



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