東京ロマネスク~冷酷な将校の殉愛~《完》

ー柾史sideー

「椿様はロシアケーキ…喜ばれましたか?」



「…美味そうに食べていた…」



俺は運転手の通に呟く。



「…中尊寺前財務大臣の弟には事業失敗で出来た借金があるらしい」




「そうでございますか…」



「…樋川に訊けば大方分かるだろう…」



俺は指の腹を唇に押し当てて、彼女の僅かに残る唇の柔らかさと熱を感じ取る。



接吻の味は甘いチョコレートの味がした。


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