東京ロマネスク~冷酷な将校の殉愛~《完》
私は消沈した面持ちで居間に戻った。



「…椿様・・・旦那様は何と…」



「縁談話は断らないと…」


「そんなぁ・・・」



私は元の椅子に座り…肩を落とす。


でも、涙は出なかった…


お父様の悔しそうな横顔を見ていると…

お父様自身もこの縁談には乗り気ではないコトを悟った。



自分を傷つけたかもしれない相手の息子に一人娘の私を嫁に出すなんて・・・常識で考えれば、おかしな話。


目には見えない大きな力で…お父様は拒絶できない状況に追い込まれているんだと…思った。


今ここで…私が抗議を意を示すのはお父様を苦しめるだけ。

黙ってるのが賢明だーーー・・・



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