Only One──君は特別な人──
「もえの泣き虫」

「うぅっ…。だって嬉しくて……」

あたしは嗚咽を漏らしてしまう。

幸い人がいないことが救いだ。(だから貴広もプロポーズしてくれたんだろう)



しばらくの間、貴広は抱きしめてくれていた。

ようやく涙が止まった頃、あたし達は体を離した。


「落ち着いたか?」

「うん」

「──もえ、もう一度言うよ。オレと結婚してくれる?」

「はい」


今度はうまく答えることが出来た。

今、あたしは世界で1番幸せに違いない。

幸福と安心感に包まれている。


「指輪は結婚式までオレが預かっておくよ」

「あれ? 結婚指輪は?」

渡された後の記憶がない。

「もえがわんわん泣いている間にオレの服のポケットに閉まったよ」

「結婚式まで嵌められないの?」







< 165 / 168 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop