Only One──君は特別な人──
「──あの…あたしそろそろ帰りますね」

「そっか…。帰ろうとしてたんだもんな」


大野さんが言葉を続けた。


「やっぱりオレ家まで送って行くよ」

「えっ…。でも」

「いいから。服着替えてくるから待ってて」


こうして、結局、大野さんに送ってもらうことになった。

帰りまでお世話になるなんて…。

人として、後輩として申し訳ない。




大野さんの住むアパートから、あたしの住んでいるアパートまで10分程で着いた。



「へぇ。水谷ってこんな近くに住んでたんだ」

車を停めた大野さんが言う。

「まさかの偶然ですよね」

「住んでいる所すら知らないって、いかにプライベートな話をしてないかだよな」


確かにその通りだ。

もし、昨日の出来事が無ければ、大野さんがすぐ近くに住んでいることも、この車の助手席に乗ることもなかったハズ。
























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