Only One──君は特別な人──
「男なんだろ?」

「……」

「だから、電話もメールも無視してたんだな」


そう。あたしはここのところ、竜くんからの連絡に応えていなかった。


クリスマスの日に竜くんが彼女と一緒にいるところを見てしまった時は、ショックで胸が押しつぶされてしまいそうだった。

あたしは本命の彼女になれないという現実を嫌というほど思い知った。


ましてや、竜くんの彼女は美人だ。

容姿であたしが勝てるわけがない。

今までは彼女の姿を見たことなかったから、いつか本命になれると言い聞かせていたんだ。


だからって、電話やメールに応えずに自然消滅を狙っていた…とかではないんだけど。

とりあえず距離を置きたかった。

年が明けたら竜くんに話そうと思っていた。


「ごめん。今日は帰ってもらっていいかな?」

「嫌だよ。オレはもえと話がしたくてここに来たんだから」


どうしよう。もうすぐ大野さんが来るのに…。
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