砂漠の舟 ―狂王の花嫁―(第二部)

(5)熱愛の砂漠

何度愛し合ったのか……何度目かの快楽を放ったあと、サクルは睡魔に襲われる。


「……さま……サクルさま」


それはほんのわずかな時間だったように思う。サクルはハッとして目を覚ました。


(――なんということだ)


これまで経験したことのない快楽、それに伴う緊張感の緩み。思わぬ油断をしたことに、彼は青くなった。

結界を張ったオアシスの中とはいえ、何かが起こらないという保証はない。


「あの、サクルさま。申し訳ありません、起こしてしまって」

「いや、一瞬だが随分深く眠っていたようだ。こんなはずではなかったのだが……変わったことはないか?」

「それが、実は……テントの外に何かの気配がするのです。最初は“砂漠の舟”だと思っていたのですが、何やら違うような」

「気配?」


リーンはサクルの胸に縋りつくようにしている。

指先はかすかに震え、どうやら恐ろしい想像をしているようだ。

そして思ったとおり、


「あの……スワイド王子は……わたしの見たモノは……」


リーンの脳裏にスワイドの最期が甦ったらしい。


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