「リーン、何を考えておる」


肌に触れる指の動きが止まったことにリーンはハッと気づいた。


「申し訳ございません……わたし……」


砂漠に夜の帳が下りて、この宮殿辺りまで来るとかなり気温も下がる。だが宮殿内の部屋は、夜になると厳重に窓をふさがれ、冷気が入ってくることはなかった。

サクルと部屋は別だが、必ずと言っていいほどリーンの部屋で眠ろうとする。

入浴好きな王は毎日、リーンを伴って浴室で数時間を過ごす。食事も散歩も常に同行して、片時もリーンを離そうとしない。夜も当然だった。
 

サクルは寝台の上に身体を起こし、深いため息をつく。


「原因はレイラーであろう。あのさそり女め、お前に私の妃として自分を薦めるよう、身の程知らずのことを言い始めたらしいな」


リーンはドキッとした。

レイラーは何も気づいていないが、サクルはレイラーの企みなどお見通しなのだ。

叩き出すと言うサクルに、リーンは何度も縋るように頼み、「せめてバスィールより迎えが来るまで、宮殿に置いてやってください」と願った。

バスィールの宮殿でレイラーはお姫様というより、女王様のようだった。

大公妃の娘ということもあるが、大公はレイラーを可愛がっていた。もちろん、本当にひとり娘が可愛かったこともあるのだろう。

しかし、リーンに宛てた手紙で、リーン母子を大切にする以上にレイラーを可愛がらなければならなかった、と告白していた。

そのせいで、必要以上に甘やかされたレイラーはとんでもない王女に育ってしまった。


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