部屋に戻り、ひとりになるなり、リーンはぐったりとして床に座り込んだ。

寝台までたどり着けない。立ち上がり、歩くことすら億劫だ。リーンをそこまで疲れさせていたのは、やはりサクルの言葉だった。


一瞬、スワイドの延命は叶えられたような気がした。しかし、それは錯覚にすぎない。なぜなら、サクルにスワイドを助け上げる意思は全くなかった。

どれほど急いでも、従者たちがバスィールの宮殿に着くまで五日から一週間はかかるだろう。

そしてここまで兵を連れてくるのに同じ時間がかかったとして……。


十日以上、流砂に埋まった状態でスワイドが生き続けられるだろうか?

答えは誰の目にも明らかだ。まだ、首を刎ねられ、一瞬で殺されたほうが楽かもしれない。

悪魔の水を飲み、大切な配下……いや、戦場の相棒ともいえるシャーヒーンに斬りかかった。サクルはそんなスワイドを一切許すつもりがないのだ。


そんなサクルを恐ろしいとは思わない。

ただ……ただ、悲しいだけだった。我がままな思惑だけで動くレイラーも、平然と人を傷つけるスワイドも、そしてそんな彼らが血の繋がった兄妹であるということも、リーンを悲しませた。



「リーン、お前が泣いても、私はスワイドを許すことはできない」


その声に彼女はふと顔を上げる。

いつの間に入ってきたのだろう。サクルがそこにいた。


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