砂漠の舟 ―狂王の花嫁―(第二部)
第4章 砂漠の舟

(1)オアシスのふたり

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リーンを抱き、砂漠の舟に揺られながらサクルは考えていた。

――嘘で構いません。どうか……愛していると言ってください。


(なぜ、あんなことを言い出したのだ? いや……それで満足するというなら、言ってやればよかったのではないか?)


これまで何人かの女を好ましい思ったことはある。抱きたいと望んだ女はすべて抱いてきた。拒まれたことなど一度もない。世間で流れているような噂――家臣の妻を強引に奪う、といった覚えもなかった。

そんなことをせずとも、差し出されることがほとんどだったからだ。


だが、他人の思惑に振り回されるのはごめんだ。処女を抱いて、面倒な義務が生じるのも避けてきた。それと同じく、子供に関しても注意は払ってきたつもりだ。

関係した女がサクルの子供を産んだという報告はない。


正妃を娶ったことで近いうちの王都に戻る必要が出てきた。神殿にも一度は挨拶に行かねばならないだろう。

王都に戻ればリーンはハーレムに入る。そして、彼女がハーレムの女主人となるのだ。


ハーレムには家臣どもが集めた妃候補が数十人いる。行き場のない娘を追い出すつもりはなかったが、リーンを正妃として崇めない者は残しておく訳にはいかない。そこは厳しく対応するつもりだ。

だが、リーンはハーレムという言葉を耳にしただけで、ひどく悲しげな顔をする。

ハーレムに入れば、サクルがリーンを放り出し、彼女の目の前で他の女を抱くかのような嘆きようだ。


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