砂漠の舟 ―狂王の花嫁―(第二部)
国境沿いのテントで教えたとおり、リーンは手の平で包み込むように、サクルに触れた。ゆっくりと上下に動かし始める。だが、その手をサクルは止めた。


「それも良いが、今日は趣向を変えるとしよう。我が花嫁に、正しい作法を教えてやる」

「え……あの」

「口で奉仕するのだ」


サクルはリーンの顎を手で持ち上げ、金色の瞳を躍らせた。


これまで、サクルが自分からねだったことは一度もない。どんな女も積極的にやってくれた行為だ。誰もがサクルを喜ばそうと必死だった。

リーンもサクルの期待に応えたいというのは同じに思える。

しかし、その指は小刻みに震え、唇が触れた瞬間、意外にも冷たく感じた。


「どうした? 怖いのか?」

「……あの、これからどうすれば……」

「先端を口の中に含んでみよ。歯を立てるな」


命じられるまま、サクルの前に屈み込んだリーンはゆっくりと口に咥えた。


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